「失敗学」 部長 中川善之

「失敗学」
 

部長 中川善之



 失敗学という名前の一風変わった学問分野があることはあまり知られていないかもしれない。失敗学会なる研究者の組織もあるそうである。ウィキペディアのページを引用すると、失敗に学び、同じ愚を繰り返さないようにするにはどうすればいいかを考える。さらにこうして得られた知識を社会に広め、他でも似たような失敗を起こさないように考える、とある。同じくwikiの記載によれば、失敗には3種類があり、織り込み済みの失敗、結果としての失敗、回避可能であった失敗(ヒューマンエラーでの失敗)に分類されるとのことである。
 射撃でも必ずミスショットが出る。8点をねらって打ち込む射手などいないであろう。8点を出してしまった時、多くの射手は「しまった」と思うだろう。8点は「失敗」である。でも多くの場合「しまった」で終わってはいないか。先の失敗学は、失敗に学び同じ愚を繰り返さないようにするにはどうすればいいかを考えることを教えている。8点が出るのはなぜなのかという疑問を持ち、何か対策があるのかを考える。例えば8点の標的を全部並べてみる。あるいは1シリーズの何発目に出たかを調べてみる。そこにもし規則性があれば一歩前進である。あるいは自分の現在の技量は1シリーズのうちに1発は8点を出してしまう程度なんだと(あまり誉められないけど)自己評価をしていれば、仮に8点を出しても「これも自分の実力」と、次の標的に引きずらない姿勢で臨めるかもしれない。なぜミスショットをしたかを整理せず、漫然と標的をねらってまた8点が出ると標的あるいは射撃そのものへの集中力がそがれ始める。そうなってしまったらもはや失敗を糧にする、どころではなくなってくる。
 立射であれ3姿勢であれ、60発撃つ間ずっと同じ精神状態を保ち、集中して標的に向かうのは練習と鍛錬を重ねた一握りの選手達に過ぎない。多くの部員は大学に入学して初めて射撃を経験する者ばかりであろう。加えて銃の管理や練習環境は少しずつ厳しさを増しているように見える。そんな中で自分の「腕」を鍛え上達するためにどうしたらよいか。失敗ショットから学んでほしいと思う。

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