「ライフル射撃を取り巻く環境の変化 −銃所持とスポーツの観点から−」 第56代主将 近藤 丈

ライフル射撃を取り巻く環境の変化 −銃所持とスポーツの観点から−

第56代主将 近藤 丈 
 

 2012年度は、向かい風が吹けば追い風も吹くような、決して平穏とは言えない一年だった。それは、昨年度の流れを引き継ぎ、銃所持が困難になるような流れがある一方で、スポーツとしての人気を高めようとする動きがあるということである。言い換えれば、銃に対する世間の風向きが強くなる他方で、マイナースポーツとしての地位に甘んじていた現状を打開しようとしているのである。
 今年は残念なことに、銃刀法違反で書類送検にまで発展した事件が起こってしまった。某大学の部員が、所持許可証受領前に銃を受け取ってしまったのである。2009年の改正銃刀法の施行以降、猟銃等講習会(初心者講習会)での試験合格が難しくなったことは、高橋前主将も述べている 通りであるが、今後も警察の所持許可が厳しいものとなるのは仕方ないように思う。さらに追い打ちをかけたのは、12月に発生した米・コネチカット州での銃乱射事件 である。残虐な事件を目の当たりにすると、銃所持の責任を感じる一方で、日本でも学生射手への銃規制が進み、射撃人口の低迷が懸念される。
 ライフル射撃への向かい風とは、メディアへの射撃のアピールが増えていることである。ISSFは2013年度ルール改正(和訳版) で「今日のオリンピックスポーツは全て、よりダイナミックに、ファンを増やし、一般の人々を惹きつける必要がある。その為には、ドラマ性を高め、青少年、観客、テレビ、メディアに対して素晴らしいショーを提供しなければならない。」(下線引用者)と述べ、メディアへ積極的にアピールする姿勢を打ち出している。ルール改正の是非はともかくとして、射撃への興味関心を引き出す工夫が議論されるのは良いことだと思う。また、学連では高校生射手が大学でも射撃を続けてもらうように働きかける一環として、大学射撃部を紹介したパンフレットを作るそうである。ロンドンオリンピックでは、射撃のTV中継が他オリンピック競技の中継に急きょ変更されたが、それはライフル射撃のマイナーさが図らずも露呈したと言えよう。射撃の魅力を伝えるために何ができるか、各大学が連携することが必要である。
 銃規制が進み射撃人気が低迷するか、それともメジャースポーツの地位を勝ち取るか―両者の流れの中で、射撃界は揺れ動いている。どちらの流れに傾くかは定かではないが、岐路に立たされているのは間違いがないだろう。 幸いなことに、部の成績は例年通り中部地区トップクラスを守っている。特に今年度は名阪戦・春中・秋中・三姿勢・伏射いずれの大会でも団体優勝を収めることができた。名阪戦は三連覇、西日・全日にも団体出場と、申し分のない成績に見えるが、一方で、四ノ宮さん・本山さんを筆頭とする新四回生に頼りっぱなしで、三回生以下の成長が期待される。





『弾痕 第51号』より。アドレスはhttp://dancon.web.fc2.com/51/51shusho.html
2012年12月14日(現地時間)に発生した、米・コネチカット州の小学校に二十歳の男がライフル銃と短銃を持って侵入、児童と教師計26人を死亡させた事件。
http://www.riflesports.jp/member/for_member/doc/issf.pdf
 





 
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